いろいろなテーマでマスコミの皆さんから取材要請を頂戴していますが、恐縮ですが時間的に全ての要請に応じきれませんので、重要と思われるテーマについては、このブログを活用して私見としてコメントさせて頂きます。
8月7日の市場関係者向けマニフェスト説明会において申し上げた「政府と中央銀行のアコード」という表現に関連した取材要請を多数頂戴しています。政府と中央銀行の関係のあり方について関心を高めて頂けることは、マクロ経済政策や財政と金融の関係に対する理解を一層深めて頂くことに資すると思います。
なお、この件に関しては、一昨日(2日)のロイターニュースが私のインタビュー記事を正確に報道してくれていますので、ご興味がある方はご一読ください。
http://news.nifty.com/cs/economy/stockdetail/reuters-JAPAN-113138/1.htm
その中でも引用されていますが、政府と中央銀行の関係については2つの留意点があります。ひとつは、「中央銀行が国債管理政策のために行動しているのではないか」との懸念を市場に与えること、もうひとつは、「国の財政や経済の動向と関係なく、中央銀行が教条主義的に行動しているのではないか」との懸念を市場に与えることです。どちらも好ましくないことです。
そこで、そうした懸念が杞憂にすぎないとのメッセージを市場に発するためのアコード、あるいはコンセンサスを形成することは、一般論としてはあり得るのではないかと思っています。当面、政府と中央銀行がどのような価値観を共有して政策運営していくのかということを、市場に対して明確なメッセージとして伝えることがアコードという表現の意味です。
先進各国が非伝統的な金融政策の領域に入り、そこからの「出口戦略」が問われている局面です。微妙な舵取りが必要な局面ですから、政府も中央銀行も情報発信には慎重さと責任が求められます。
そうした観点から、ひとつ是正すべきことがあります。今日の大手紙にも「日銀幹部」という匿名で、この微妙な舵取り、及び政府(16日に発足する新政権)と中央銀行の関係に関する発言が報道されています。匿名で、かつ自らが事実関係を確認できない事柄に対して言及することは、中央銀行幹部として適切な対応とは思えません。
日本経済の微妙な舵取りを安定的に行うためにも、また「出口戦略」を成功させるためにも、中央銀行幹部に属する方々には責任ある対応を求めておきます。
いずれにしても、政府も中央銀行も、協力して誤りなき政策対応を実現していかなければなりません。(了)